第98回日本脳神経外科学会中部支部学術集会 

第4回愛知県血栓回収療法教育セミナー ケースカンファレンスプログラム

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1. 血栓回収時のラインアップの増えたバルーンガイデイングカテーテル
(旧オプテイモ・オプテイモフレックス・ブランカ)の悩む使用選択

  • 安城更生病院 脳神経外科 太田圭祐、川口知己

2. M1/M2に小型動脈瘤が隠れていたIC閉塞の一例

  • 国立病院機構 名古屋医療センター脳神経外科 木全将之 浅井琢美

3. 入院4日後に増悪したTIA発症右内頸動脈閉塞の一例

  • 国立病院機構名古屋医療センター 脳神経外科 浅井 琢美

4. 椎骨動脈閉塞に対して機械的血栓回収療法を施行した一例

  • 大垣市民病院 脳神経外科 今井 資

5. TIAを繰り返す左中大脳動脈高度狭窄に対してEnterpriseを留置した一例

  • 名古屋市立大学病院 脳神経外科  山中智康

6. 再開通に難渋した一例

  • 愛知医科大学 脳神経外科・脳血管内治療センター  阿藤文徳、大島共貴、松尾直樹、川口礼雄、宮地 茂

7. ICA tandem lesionに対する治療戦略

  • 藤田医科大学 脳卒中科  陶山謙一郎

抄録集

1. 血栓回収時のラインアップの増えたバルーンガイデイングカテーテル
(旧オプテイモ・オプテイモフレックス・ブランカ)の悩む使用選択


2. M1/M2に小型動脈瘤が隠れていたIC閉塞の一例


50歳男性.修正大血管転位症に対して18歳時に他院で手術後,ペースメーカー留置.発作性心房細動で前医入院し電気的除細動された翌日に前医院内で倒れているのを発見された. 左半身麻痺,右共同偏視を認め, 3D-CTAで右内頸動脈閉塞を認め血栓回収療法目的に当院へ転院搬送となった(発見から当院来院までおよそ1時間半).当院での頭部CT検査では脳出血や広範な梗塞所見を認めなかったため (A),血栓回収療法を行うことになった.
9Fr OPTIMOを右内頸動脈に誘導し血管撮影を行ったところ,右内頸動脈先端部閉塞を認めた (B).Solitaire 6mm×40mm + ACE68でのCombined techniqueにて血栓を回収したが,M2 main branchの再開通が得られず,左麻痺も残存していた (C-1?2) . 4MAX +Velocity +CHIKAI 14のシステムをM2に誘導しようと試み,Wireを通過させVelocityを誘導させる際にWireが大きくたわむ挙動が見られた. 直前の血管撮影を改めて確認するとM1/M2に小型の動脈瘤が認められ (C-3), 撮影を行うと同部位からextravasationを認めた (D).システムが動脈瘤を穿通したものと判断した.
OPTIMOでproximal flow controlを行いながらSL-10で動脈瘤内をコイルで塞栓するもextravasationが持続するため (E),致し方なくM1遠位部をコイルで塞栓し止血を得た (F).最終的撮影ではM1 distalの閉塞で,ACAやMCA穿通枝の血流も温存された (G).
術後意識レベルは清明であったが,左上肢高度麻痺・左下肢中等度麻痺が残存し,術後36日目にmRS 4の状態でリハビリテーション病院へ転院となった.最終転帰は自立歩行可能となり,mRS 1まで回復した.
 Discussion point
 ①M1/M2に動脈瘤を認めるM2閉塞の場合,血栓回収を試みるべきかどうか.
 ②血栓回収を試みる際の手技の工夫.
 ③血栓回収中に動脈瘤の破裂を合併した場合の治療方法



3. 入院4日後に増悪したTIA発症右内頸動脈閉塞の一例


51歳男性。最近一か月間に2回右目がぼやける発作が数分間見られた。入院当日右目が突然見えなくなり、左上下肢の脱力にて歩行困難となったため当院救急搬送された。 これらの症状は数分間で改善し、来院時は無症状であった(NIHSS 0)。 DWI-MRIにて右前頭葉に小さな脳梗塞を(A)、MRAにて右内頸動脈閉塞(中大脳動脈開存)を認めた(B)。症状が完全に消失していたため入院・内科的治療を開始したが、右視覚異常が数回出現したため翌日脳神経外科にコンサルトされた。造影CTにて総頸動脈遠位部(C)より眼動脈起始部(D)まで血栓による連続した閉塞を認め、閉塞血管の外周には造影剤がリング状に認められた。 右中大脳動脈は変わらず開存していたが(E)、大動脈弓には巨大な造影欠損像がみられた(F)。以上から大動脈弓の巨大血栓からの塞栓症と考えたが、無症状かつ治療リスクを考え内科的治療を続行した。 しかし、入院4日目の夜間に意識障害・左片麻痺で発見され(NIHSS 21)、DWI-MRIにて右MCA領域の広範な虚血巣(G)およびMRAにて右内頸動脈-中大脳動脈閉塞を認めた(H)。 すぐに血栓回収を施行した。右上腕穿刺にて9Fr OPTIMOを直接挿入し右総頸動脈に誘導した。右内頸動脈起始部から閉塞していたため(I)、6Fr ENVOYにて吸引すると血栓が回収された。 続いてACE 68+VelocityのシステムにてM2にVelocityを誘導し、Solitaire platinum 4mm×40mmとのcombined technique(J)にて2passで右M1まで再開通が得られた。M2病変についても血栓を回収し、最終TICI 2bにて終了した(K,L)。

Discussion points
・治療介入のタイミング
・血管内治療のアプローチとガイディングカテーテルの選択
・大量で長い閉塞病変に対する血栓回収の方法




4. 椎骨動脈閉塞に対して機械的血栓回収療法を施行した一例


70歳男性、発症前ADL自立。高血圧の既往。
左半身麻痺、高度構音障害で搬送。来院時、NIHSS10点、MRAで右椎骨動脈閉塞及び延髄右内側にDWIで淡い高信号を認め(A)、延髄正中症候群(Dejerine症候群)と診断し、t-PA投与を行いNIHSS1点まで改善した。 しかし、HCU入院3時間後、再度左半身麻痺及び構音障害出現(NIHSS11点)し、造影CTではt-PA投与前と同様、右椎骨動脈閉塞の所見を認めたため(B)、血管内治療の方針とした。 右上腕動脈に6Frシースを挿入し、Catalist6+0.035 inch GWで右椎骨動脈へ誘導し撮影すると、PICA以遠の閉塞を認めた。Marksman + CHIKAI14を用い、lesion crossし、末梢を確保し、Solitare 4*40を展開、回収し、再開通を得た。 直後より、左片麻痺は改善したものの、高度狭窄の残存を認めたため、ASA200mg及びCLP300mg投与の上、Gateway2.5*15で2回PTAを施行し、狭窄部の改善を認め、手技を終了した(C)。 術後、MRIで右小脳半球及び延髄内側一部に虚血の完成を認めたが、MRA及びCTAで右椎骨動脈開存は維持された(D)。軽度の右優位の小脳失調残存し、mRS3で回復期転院、3ヶ月後mRS1となった。

Discussion point
1. 椎骨動脈閉塞(椎骨動脈解離による穿通枝梗塞も考えられる例)の血栓回収療法の是非
2. PTAの回数、圧、時間について。またステント留置を行うべきか。






5. TIAを繰り返す左中大脳動脈高度狭窄に対してEnterpriseを留置した一例


81歳男性。右上肢の麻痺で発症し左中心前回に急性期脳梗塞を認め(A),心房細動を合併していたためワルファリンによる抗凝固治療が開始された。 この時点では主幹動脈の閉塞は認めていない(B)。しかし発症から18日目に右片麻痺が再増悪した。MRIで左M1以降の描出が消失し(C),watershed領域に新規梗塞巣を認めた(D)。 NIHSS4点で抗血小板療法も追加され内科的加療が継続されたが、その後3度のTIAを認め,発症から1か月で当院へ転院となった。入院日の脳血管造影検査では左M1 distalに90%の高度狭窄を認めた(E, F)。 内科治療抵抗性の頭蓋内動脈狭窄症のためPTAを行う方針とし,DAPTをloadingした。recoilの場合にEnterpriseが使用できるように当院の未承認新規医薬品等評価委員会において緊急で審査を受け,入院翌日に経皮的脳血管形成術を施行した。
Unryu 1.5×10mmでballoon PTAを行なったがrecoilしてしまい,Enterprise 4.5×22mmを留置した(G)。狭窄率は50%に改善し,末梢の血流も良好になった。術後に過灌流症候群は合併せず,右片麻痺は改善傾向で術後1週間のNIHSSは0点であった。

Discussion point
1.内科治療抵抗性のM1 distalの頭蓋内動脈狭窄症に対して経皮的脳血管形成術の介入の是非について。
2.今回の症例でステントを留置する場合にどの種類のステントを選択するか。
(Enterprise, Wingspan, 冠動脈ステント)。

6. 再開通に難渋した一例


60歳男性。糖尿病性ケトアシドーシスで他院に入院中に倒れているのを発見、意識障害、左片麻痺を認め、PSCに搬送され、そこよりt-PAを行いながらdrip & shipにて当院転送。
O2Pは3時間48分。右M1遠位の閉塞に対し、Solitaire 4 x 40mm とReact 71のASAP法を用い、13分後の1 pass 目ではimmediate flow restorationは見られるのに再開通が得られず、20分後の2 passにても再開通が得られなかった。 高度狭窄性病変の急性閉塞と判断し、Gateway 2 x 9mmを用いたPTAにて拡張をはかったが、すぐにrecoilにて閉塞した。 その後ガイドカテーテルからの撮影にて頸部内頸動脈から造影されず、コイリングした屈曲部における解離性閉塞が疑われたため、Wallstentを留置したが、ステント内に血栓が多数遺残したため2本目を重ね置きし、再開通に成功した。 その後、閉塞している右M1遠位の閉塞部に対しEnterpriseを留置して狭窄は残存するものの全開通を得た。術後梗塞部位についてはやや拡大が見られ、麻痺の改善は得られなかったが、意識状態はほぼ清明となり、1ヶ月後にmRS 3にてリハビリ転院となった。

Discussion point
1. 狭窄病変の閉塞をどう見分けるか
2. 高度屈曲したアクセスルートにおけるアプローチ


7. ICA tandem lesionに対する治療戦略


 76歳男性。左共同偏視, 全失語, 右完全片麻痺, NIHSS 34/42。頭部CT・MRIにて左内頚動脈閉塞に伴う急性期脳梗塞の診断。ASPECTS 9/11であり血栓回収を行った。
 CAGを行うと内頚動脈起始部から閉塞。内頚動脈狭窄に伴うATBIの可能性も考慮。マイクロカテーテルでlesion cross後, マイクロカテーテルから造影すると内頚動脈遠位も閉塞。内頸動脈起始部および頭蓋内内頸動脈のtandem lesionであった。 頭蓋内内頸動脈の詳細な閉塞部位は不明。マイクロカテーテルから造影しながら, 遠位が描出されなくなる部位まで進め, REACT 71でADAPT techniqueで1pass目を行ったが再開通は得られなかった。
マイクロカテーテルをM1まで誘導後に造影し, 閉塞部を超えたことを確認。Solitaire 6/40を展開し, CAPTIVE techniqueで回収(2pass目)したところ, 頭蓋内内頸動脈の閉塞は解除されなかったが, ICA起始部の閉塞が解除された。 内頚動脈起始部に狭窄はなく, 血栓による閉塞であった。また, この時点で造影すると内頚動脈遠位はAchor A.起始後に血栓があることがはっきりわかったので, REACT 71を誘導し, ADAPT techniqueで回収したところTICI 2Cの再開通を得た。

Discussion point
1. tandem lesionへのアプローチ → retrogradeで治療する方針とした。結果的にICA起始部に狭窄はなく, 血栓による閉塞だった。
2. ICA occlusionで閉塞部位が不明の場合, stentとaspirationどちらで回収するか。
→ 長めのstentを使用するのが良いだろう







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